Japanese
English
研究と報告
心気症の精神療法—自己愛的病理の観点から
Psychotherapy of the Hypochondriasis: From the viewpoint of the pathology of narcissism
近藤 三男
1
,
室谷 民雄
2
Mitsuo Kondoh
1
,
Tamio Muroya
2
1名古屋大学医学部精神科
2名古屋第二赤十字病院精神科
1Department of Psychiatry, Nagoya University School of Medicine
2Department of Psychiatry, Nagoya Second Red Cross Hospital
キーワード:
Hypochondriasis
,
Psychotherapy
,
Doctor-patient relationship
,
Narcissistic personality disorder
,
Narcissistic injury
Keyword:
Hypochondriasis
,
Psychotherapy
,
Doctor-patient relationship
,
Narcissistic personality disorder
,
Narcissistic injury
pp.131-139
発行日 1988年2月15日
Published Date 1988/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405204465
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
抄録 心気症の力動的構造を医師—患者関係における相互の陰性感情の増幅という事態として理解する。この医師一患者間に生じている事態を転移と逆転移という観点から見ると,患者が医師に対して,自己の誇大感を支持するような役割を一方的に期待してくるために,医師の側ではそれに対する抵抗として種々の陰性感情が喚起されることがわかる。これをKohutに始まる自己心理学派の用語で言えば,自己愛的対象関係ということになろう。
心気症の治療には,この自己愛という観点が有用であるが,心気症は,その病前性格が広範囲にわたること,強烈な依存関係に陥ることが少ないことなどの点で,自己愛パーソナリティ障害と異なっている。われわれは心気症を自己愛的外傷に対する反応として解釈する。そして,心気症の治療は,「完成された」心気症を前心気症状態に戻す段階・前心気症状態における自己評価の修復の段階の2つに区別するのが妥当であろうと考える。
Copyright © 1988, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.