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ドイツ語圏の失語学会(正確には失語研究および治療のための研究共同体Arbeitsgemeinschaft fur Aphasieforschung und-Behandlung)はドイツ脳外傷臨床脳病理学会Gesellschaft für Hirntraumatologie und Klinische Hirnpathologie(これは更に全ドイツ神経科医会Gesamtverband Deutscher Nervenärzteの一分科会である)の一部会として1975年に発足し,1981年現在,Aachen工科大学医学部神経科(主任Prof. K. Poeck)に事務局(係はToken Testの研究で知られる心理学者B. Orgass―会長なく主催者の持ちまわり)を置き,毎年秋に定期的学術研究会を開いているが,1980年9月末から81年6月までの滞独中,筆者は1980年11月7日/8日,オランダのMaastricht大学で行われた第6回例会に参加する機会を得たので,神経心理学領域の近年の活動情況があまり知られていないドイツ語圏および隣接諸国の実状の紹介をもかねて,筆をとることとした。
今回の開催地Maastrichtはオランダ東南部の一角を占めるLimburg州の首都で,人口約10万の小邑ながら,市名の語源(Maastricht "Trajectum ad Mosam",つまり「Maas河〔フランス語圏ではMeuse河〕の渡踄点」)が示すごとく古代ローマ時代に遡る歴史を持ち,6世紀からカロリンガ朝時代に由来するオランダで最も古い聖Servaas教会や,11世紀建造のロマネスク様式のO. L. Vrouwekerk(フランス風に言えばノートルダーム教会)といった重要文化財を中心に古い町並を残す落着いた町である。会場にあてられたMaastricht大学本部の講堂(図1)もロマネスク風の教会を模した趣のある建物である。今回の主催者は,オランダのRotterdamのErasmus大学の神経心理学部門部長F. van Haarscamp博士で,近年ではたとえばToken Test簡易版に関する研究(Neuropsychologia,15;467,1977)や小児失語例の報告(Brain & Language,6;141,1978)などで知られている。
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