巻頭言
精神医学の実践に必要なもの
松本 啓
1
1鹿児島大学
pp.2-3
発行日 1973年1月15日
Published Date 1973/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405201970
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近年,精神科医療はいかにあるべきかということが,精神科医および精神医療従事者のあいだで叫ばれるようになった。ここで話題になっている多くは,精神科医療の従来のあり方や政策に対する批判と反省である。
たしかに,このような批判や反省も必要ではあるが,日常の臨床において患者や世間の多くの人人に接していると,精神科医や精神医療従事者の声は,相手のない一人相撲のように,まったく,理解されていないばかりか,これらの声には無関心であることがわかる。これについては,いろいろな理由が考えられるが,精神科医療や精神衛生に関する知識の啓蒙が国民の間に十分なされていないことが最大の理由としてあげられると思われる。いくら精神科医や精神医療従事者が声を大にして叫んでも,犬の遠吠えのように,一般世間の人々にはきこえ,なんらの関心も呼び起こさないのであろう。精神衛生知識の啓蒙運動については,戦後,諸外国と同様,わが国でも関係者の間で,その必要性について強く叫ばれるようになったが精神衛生知識の普及はまだまだ十分ではない。
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