Japanese
English
研究と報告
精神分裂病の病状期中に生じた異常体験反応
Abnorme Erlebnisreaktion bei einem Schizophrenen
高橋 隆夫
1
,
平林 幹司
1
,
四十塚 龍雄
1
Takao Takahashi
1
,
Kanji Hirabayashi
1
,
Tatuo Sijūzuka
1
1岐阜大学医学部神経精神医学教室
1Dept. of Neuropsychiat., School of Med., Gifu Univ.
pp.39-44
発行日 1971年1月15日
Published Date 1971/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405201695
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I.序言
精神状態の改善が行なわれ,対人的な接触もかなり円滑に行なわれるような状態にまで回復していたKという精神分裂病者が,ある時期から無気力な状態となって,対人的な接触を避けようとする態度を取るようになり,時には独りで何事かを考え込んでいるといった様子を呈するに至った.この時期には,面接を行なっても疎通性は乏しく,問診にも形式的,表層的に応じているという感じであった.その後,彼は再び元気を取戻し,“あの頃,病気が悪くなっていた”とか“当時,自分はあることに非常に苦しめられていた”などということを,自ら語ってきた.
彼が語るところによれば,この精神的苦脳は,“あることを契機として生じた”ものであり,“その契機となった状況が消失するとともに消え去っていった”とのことである.彼は,この精神的苦脳をきたす以前より,分裂病体験を抱き続けていたのであるが,この苦悩に悩まされている時期においても,またこの苦悩が消失してしまってからも,彼の分裂病体験の変化はわれわれには感じられなかった.また彼は,この時期の苦悩を,“分裂病の悪化によるもの”として捉えてはいたものの,この苦悩は,彼に分裂病体験に対する場合とはまったく異なった態度を取らせていたということが,彼の言葉から明らかとなった.
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