Japanese
English
研究と報告
分裂性幻聴—その消失過程を通しての一考察
Über die schizophrene Gehörshalluzination, betrachtet von ihrem Verschwindungsvorgang
大森 健一
1,2
Kenichi Omori
1,2
1神経研究所
2東京医科歯科大学精神神経科
1Neuropsychiatrisches Forschungs-institut
2Psychiatrische und Nervenklinik der Tokio Ika-Shika Universität
pp.679-687
発行日 1970年8月15日
Published Date 1970/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405201646
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
I.はじめに
現在も分裂性幻聴は精神科医の深い関心と興味をひきつけている現象の一つである。それはEsquirolの対象なき知覚の確信という簡明な定義により学問的対象としての意味を有して以来,感覚生理学的方面,脳病理学的方面の研究においてさまざまな実を結び,K. Jaspersの精密な記述的現象学的理論へと発展した。しかしそこにおいては幻覚の形式と内容は峻別され,了解性という限界が引かれることになった。
一方力動的研究は主として幻覚の内容と関連した発展を示して対人関係を基礎とした幻覚論が述べられるに至った。例えばH. S. Sullivanは,安全欲求による不安や葛藤の象徴化で,安全な人間関係を再獲得しようとする表現ととらえており,またF. Fromm-Reichmannによれば,幻覚が知覚に突入した強力な抑圧や解離された衝動によることが真実ならば,すべての幻覚は過去と最近の現実の体験に基礎をおいていることになると述べている。
Copyright © 1970, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.