特集 医療危機と精神科医—第6回日本精神病理・精神療法学会 討論集会をめぐって
巻頭言
特集にあたって
土居 健郎
1
1聖路加国際病院精神科
pp.86-87
発行日 1970年2月15日
Published Date 1970/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405201565
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「医療危機と精神科医」と題された今回の特集は,昭和44年10月5日,6日の二日間,日本精神病理・精神療法学会第6回大会において催された討論集会の模様を伝えるべく,同集会において主に発言した何人かの方々の感想ないし総括を集めたものである。そこではじめに,なぜこのような討論集会が行なわれるに至ったか、またその模様を本誌上に発表するのはなぜかという二点について,説明したいと思う。
大荒れに荒れた春の金沢学会の後を受けて,秋に予定されていた精神病理・精神療法学会もはたして平穏に経過するであろうかという不安は,秋が近づくにつれわれわれ運営委員の上に重くのしかかって来始めていた。ことに若手の諸君から「本学会も解体しなければ」という声を耳にすることもあって,もしゲバルトをもってプログラムの廃止を要求されるならば,そのときは潔く敗退しようと,われわれ運営委員はひそかに決心していたのである。ところがまったく思いがけないことに,大会の約二週間前,われわれ運営委員および若干の会員のところに,討論集会実行委員会の名のもとに大会を全面的に討論集会に切りかえることを求める文書が速達で舞いこんだ。この文書はその後全会員に配布されたものと同じであるが,そこには時勢の重圧の下で如何にして精神科医として生きるべきかという問いかけが切々とした文字で綴られていた。もっともそこには同時に,もし討論集会に切りかえられないときは「無意味な対立と激突を起こすことになりかねません」という言葉に示されるように,袖の下の鎧が明らかに見て取れたのではあるが。
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