Japanese
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展望
分裂病に関する最近の臨床遺伝学的研究—ふたごの研究を中心として
Recent Studies on Schizophrenia From the Standpoint of Clinical Genetics, With Special Reference to Studies in Twins.
井上 英二
1
E. Inonye
1
1東京大学医学部脳研究所
1Division of Human Genetics and Criminology, Institute of Brain Research, University of Tokyo, School of Medicine
pp.3-18
発行日 1963年1月15日
Published Date 1963/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405200514
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まえがき
精神医学が是非とも解決しなければならない大きな問題の一つに,精神分裂病とは一体何かという問題がある。すべての精神医学者は,この古くて新しいやつかいな問題を,何とかして解決したいと願つているであろうし,また精神医学の中のいろいろの専門分野の学者達も,それぞれの立場から研究をすすめ,それぞれの学説をたててこの問題の解決に近づこうとしている。
しかし,このようにして提唱される多くの学説は,必ずしもたがいに補ないあうものばかりではなく,中にはたがいに対立をして問題を一そう複雑にし,その結果分裂病の問題を何とかして解決したいというめいめいのささやかな希望の芽をつみとつてしまう場合も少なくない。遺伝学も,かつてはそのような専門分野の一つであつた。その功罪の一例をあげれば,家族の中の分裂病者の頻度,すなわち経験的遺伝予後の研究は,遺伝相談などの実際の面に大切なデータを提供したが,一方では,その研究の当然の産物である分裂病に関する素朴な遺伝説が,一部の学者の尖鋭な攻撃の的になつた。また,家系研究の結果から提出された遺伝方式についてのいくつかの学説の間でも,長い間論争が果てなかつたというありさまである。
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