紹介
—Hans W. Gruhle 著—了解心理学 Verstehende Psychologie—〔第7回〕
東京大学医学部精神医学教室精神病理グループ
pp.567-568
発行日 1960年8月15日
Published Date 1960/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405200251
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おわりに
6回にわたつたGruhleの了解心理学の本書の紹介は,前回をもつて終了したので,最後のしめくくりとして,本書の特徴について若干の所感を記したいと思う。
JaspersはGruhleを,「精神医学における科学的良心」の代表的人物であると高く評価している。この評言は本書の基本的精神についてもよく妥当する。そこには終始一貫して著者の科学的批判の精神が横溢している。そこに引用されている文献はおびただしい数にのぼるが,彼はそれらをきわめて忠実念入りに紹介するとともに,批判を加え,取捨選択を重ね,かかる操作の進展につれて,自己の知見を漸次に明確に構成している。おおむね,文献の引用が先行し,その批判を通じて,Gruhle自身の主張がにじみ出てくる。従つて本書においては,批判の素材として引用記述された文献の占める頁数は全600頁の過半を占めており,ともすると著者自身の見解が引用文献の記述におおわれてしまい,自説と他説の区別が一読しただけでは不分明な場合さえあるくらいである。又軽妙な皮肉や譬喩を駆使して表現はきわめて活気に満ちているが,われわれ外国人にとっては理解し難く,ときに煩雑に感じられることもある。
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