紹介
—Hans W. Gruhle 著—了解心理学 Verstehende Psychologie—〔第3回〕
東京大学医学部精神医学教室精神病理グループ
pp.179-184
発行日 1960年3月15日
Published Date 1960/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405200200
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Ⅴ.人格と環界
イ.幼時における人格の形成
新生児がもつている素質は多数あるが,そのうち,比較的簡単に確認できるものはそう多くはない。その1つは豊かな自発性である。衝動発生の活溌さは生後3,4カ月で可成り目立ち,意志と密接に関連して,人格の根本特性を形成する。このような自発性の豊かさは環界と結びつくことが少ない。これに反して自発性の貧困は素質よりもむしろ発育障害や身体的疾患に帰せられる。そして,自発性以外の多くの素質は成長と共に漸次顕現してくる。
しかし,精神の成長は虚な空間の中で行なわれるのではなく,環界の2つの重要は作用がこれに働きかける。すなわち,環界は一方では経験に必要な素材を与え,他方では育成に適当な条件を附与するのである。豊かな教養,たびたびの旅行,良い風習などに恵まれた環界が全生涯にわたつて有利に影響することは1つの原則といつてよい。
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