巻頭言
児童精神科医の眠れぬ夜
飯田 順三
1
1奈良県立医科大学看護学科人間発達学
pp.1130-1131
発行日 2013年12月15日
Published Date 2013/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405102610
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今や児童精神科医は大忙しである。これは発達障害バブルと言われるほど最近の発達障害に関するニーズが社会においても精神医学の世界においても急速に高まってきていることによるところが大きい。クリニックでは予約をしても3か月待ちはざらで,時に1年待ちと言われることさえある。この1年待ちを吹聴する児童精神科医もどうかと思うが,とにかく患者のニーズは高まっている。精神医学のさまざまな学会でも発達障害を中心として児童精神医学に関するテーマになるとどの会場も溢れんばかりの盛況である。ポリクリの学生や研修医でも子どもに興味があるという声は多い。日本児童青年精神医学会の会員は約4千人に昇り,会員数においては日本精神神経学会に次いで2番目に大きな学会である。
このように日本の児童精神医学は一見発展しているかのようにみえるが,実情は必ずしもそうではない。上記の「児童精神科医の眠れぬ夜」という題も,引っ張りだこで忙しくて眠れないという意味ではなく,表面上の注目度とその内実の不一致を考えると眠れないという意味である。第1に日本の児童精神科医は欧米諸国と比べてかなり少なく,近年もそれほど増加していない。英国は児童精神医学会の創立は1971年であり,日本よりも約10年遅れている。それにもかかわらず児童精神科医は約600人いて,1人当たりの20歳未満の人口は27,500人である。フランスでは児童精神科医は約2,000人いる。日本では児童青年精神医学会の認定医は206人(2013年4月現在)しかおらず,1人当たりの20歳未満の人口は16万人を超える。
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