Japanese
English
展望
統合失調症のゲノム研究
Current Perspectives on the Genetic Analysis of Schizophrenia
山田 和男
1
Kazuo YAMADA
1
1独立行政法人理化学研究所脳科学総合研究センター分子精神科学研究チーム
1Laboratory for Molecular Psychiatry, RIKEN Brain Science Institute, Wako, Japan
キーワード:
Genome-Wide Association Study
,
Single nucleotide polymorphism
,
Copy number variation
,
MicroRNA
Keyword:
Genome-Wide Association Study
,
Single nucleotide polymorphism
,
Copy number variation
,
MicroRNA
pp.849-856
発行日 2013年9月15日
Published Date 2013/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405102549
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はじめに
統合失調症に罹患されている方のご家族から「この病気は遺伝しますか?」という質問を受けることがある。「遺伝・遺伝子」が関与していない疾患は厳密には存在しないが,この言葉にはスティグマを感じさせる響きがある。理解しやすく過度の不安を与えない知見に基づいた説明をと考えると,それほど容易ではない。また,臨床医の先生方から「統合失調症の遺伝子研究の進捗状況」について尋ねられることがある。ゲノム解析技術は日々進歩を続けている。統合失調症の分子遺伝学的研究は連鎖解析(linkage study)から関連解析(association study)にシフトし,DNAチップによるゲノムワイド関連研究(Genome-Wide Association Study;GWAS)が普及したことから,有力な疾患関連遺伝子が次々と提唱されている。さらに次世代シークエンサー(Next Generation Sequencer;NGS)の出現で全ゲノム塩基配列の解析が始まり,ゲノム研究は非翻訳領域や翻訳後修飾までも対象として,急速に細分化してきている。しかし,現在までの知見は統合失調症の病態についていくつかの推察を与えはするものの,臨床に貢献するといえるものは未だなく,進捗状況について説明をと求められると答えに窮する。
本稿ではこれらの問いに対する現時点で可能な答えを探すべく,統合失調症のこれまでの「遺伝・遺伝子研究」を概観し,これからの「ゲノム研究」を展望したい。
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