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はじめに
広汎性発達障害(pervasive developmental disorder;PDD)とは,対人相互反応の質的な障害,意思伝達の質的な障害,活動と興味の限局を3主徴とする発達障害であるが,現在のところ根治的治療は存在せず,早期介入,および支援体制の必要性が重要視されている。2005年に施行された「発達障害者支援法」により,早期介入の支援体制は各地域で整いつつある一方で,幼児期・学童期は大きな問題を指摘されずに過ごし,青年期や成人期に何らかの理由で精神科の受診に至り,PDDと診断されるケースも少なくない。牛島は,発達障害者が成人になって精神医学的症状を携えて援助を求めることは少なくなく,ただ単に子どもの大人版ではないことを指摘している13)。また,統合失調症や強迫性障害と診断されているケースや,気分障害の存在だけが認識され,根底にあるPDDの存在が見逃されるケースでは,その後の支援を考慮した支援計画を立てるうえでも成人期にPDDを診断することは重要である12)。しかしながら,成人期になって初診する症例では精神症状,発達障害像ともに非定型で,診断の見極めが非常に困難であることや,最近の風潮として過剰診断の問題もあり,どのような診断指針を策定すべきかは,緊急に検討すべき課題である13,14)。
愛媛大学医学部附属病院精神科(以下,当科)は,愛媛県中予地区で児童青年期専門外来を有する唯一の基幹病院である。児童青年期専門外来の初診児童のうち,PDDと診断し得る患者の割合は約32%にのぼるが,成人になって初診するPDDの患者数も増加傾向にある。今回我々は,18歳までに初診したPDD群と18歳を越えて初診したPDD群の比較を行うことで,PDDの実態を把握することを目的として検討を行った。本研究は,既存資料を用いた後方視的な検討であるが,個人情報を保護するため,解析は数値化し匿名で行い,個々の症例についての個人を特定する言及や検討を避け,個人情報には最大限配慮している。
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