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はじめに
発達障害とは,胎生期および乳幼児期から思春期までの期間において,さまざまな原因により,発達に遅れや質的な偏り,および機能獲得の困難さが生じる心身の障害を表す概念である。精神医学の領域では,発達障害には精神遅滞,広汎性発達障害や学習障害,注意欠如・多動性障害などの障害が含まれる。このような発達障害を持つ子どもに対しては,早期発見・支援することが重要と考えられている。それは,人生早期からの適切な理解と支援が,健全な育ちの保証と二次障害の予防につながるためである。
本研究で取り上げる保育園・幼稚園(以下,「園」)は,早期発見・支援において重要な役割を果たしている。なぜなら,園は就学前の子どもが長時間,同年代の子どもや大人と集団生活を送る場所であり,そこで働く職員は子どもの「気になる行動」4)に気づくチャンスを多く持つからである。すなわち園は,早期発見の第一線にあるといえる。のみならず園は,生活体験や種々の活動を通じて子どもに成長する機会を与える場所である。そういう意味で早期支援の場所でもある。
奥山らによる調査報告2)では,多くの保育園が,発達障害も含めた精神的問題への対応を行っていることが示されている。この報告によると,園のみでの対応以外の方法として,相談機関(園医,市役所,保健所,児童相談所,教育関係機関など)の利用が最も多かった。つまり,発達障害を持つ子どもが通う園を支援するためには,相談機関や相談環境の充実が重要と考えられる。そこで本研究では,地方都市の1つであるW県に焦点を当て,W県にある園が抱くニーズを調べ,相談機関や相談環境の整備,地域の関係機関による支援ネットワークのあり方などについて検討を試みた。なお,調査内容は,具体的には,①園による発達障害を疑う子どもへの対応の現状と問題点,②園の関係機関への相談状況,③園からみた相談によるメリットや問題点,④園が求めるサービスと機関連携の形,の4点とした。
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