巻頭言
精神医学のはじまり―異常と危険
南光 進一郎
1
1帝京大学医学部精神神経科
pp.798-799
発行日 2003年8月15日
Published Date 2003/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405100707
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精神医学は精神の異常を対象としている。したがって学生に行う講義は「精神の異常」とは何かを解説することから始めることになる。実際,精神医学に興味を持っているたいていの学生は,精神が異常であるとはいったいどのように判断するのか,に多少なりとも関心があるようである。ところが,あらためて「精神の異常」を定義するとなるとこれがなかなかやっかいである。意識であれ,知能であれ,何かを定義することは常に難しい。「精神の異常」どころか,そもそも精神とはなんぞや,と精神そのものを定義するとなると哲学になってしまう。不思議なことに,あるいはこの難しさを思えば当然かもしれないが,手元にあるいくつかの教科書を見ても,精神の異常とは何か,について,ほとんどかあるいはまったく触れられていない。この拙文を読んでいらっしゃる方々の多くは精神科医や臨床心理士であろうが,「精神の異常」について学生時代にどのように教わったであろうか。あるいはご自身ではどのように定義しておられるのであろうか。
以下は学生に対して私が行っている講義の内容である。
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