Japanese
English
特集 症状別・疾患別にみた注意を要する心電図所見
胸痛:たこつぼ症候群
Chest Pain:Takotsubo Syndrome
明石 嘉浩
1
Yoshihiro J. Akashi
1
1聖マリアンナ医科大学循環器内科
1Division of Cardiology, Department of Internal Medicine, St. Marianna University School of Medicine
pp.243-250
発行日 2016年3月15日
Published Date 2016/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404205918
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はじめに
たこつぼ心筋症は,心身ストレスを受けた閉経後女性に好発し,突然の胸痛発作や呼吸困難,心電図変化,左室壁運動異常など,急性冠症候群(acute coronary syndrome;ACS)と極めて類似した発症形態でありながら,冠動脈に責任病変を持たずに左室収縮不全を来すことが特徴である.図1に示すとおり,左心室造影収縮期に心尖部が無収縮である一方で,心基部のみ収縮しているように見え,あたかも壺のような形であることから名付けられた.たこつぼ心筋症にまつわる最近の論文は,PubMed上で海外を中心に数多く報告され,本疾患が認識されるようになった.本疾患の対ACS患者に占める割合はおよそ2%とされ1),統計学的には未だ数少ない疾患であるが,僅かな症状のため見逃されている症例がいると想像される.女性のACS患者に占める割合では約1割となり,決して珍しい疾患ではない2).
2008年に米国大規模データベースより,たこつぼ心筋症として解析可能であった約6,800名の対象として調べた結果では,50歳以上が約90%を占め,女性が90%以上,白人が約7割を占め,アジア系では発症率が僅か1.1%であった2).決して日本人特有の疾患でないことが明らかとなった.最近,筆者らはヨーロッパ心臓病学会ワーキンググループのなかで,たこつぼ心筋症が本来の心筋症とは一線を画すこと,様々な疾患に伴って発症することなどから,“症候群”として扱うことが自然であろうという結論に達し3),学会からステートメントを発表した4).
今回は,たこつぼ症候群の検査所見に関して,心電図を中心に述べることとし,この症候群の本質に迫りたい.
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