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はじめに
胃癌患者の予後の改善には早期診断と早期治療が重要と考えられ,早期胃癌の発見・鑑別・ステージングに対する内視鏡診断は大きく発展してきた.現在胃癌は進行癌よりも早期癌で発見される症例のほうが多く,早期胃癌に対する画像強調観察,拡大内視鏡を用いた診断の進歩には目を見張るものがある.しかし一方で,不幸にも胃癌が進行した状態で発見される患者がいまだに多いのも実状である.進行胃癌の組織構築は早期胃癌と大きく異なるため,その診断体系は異なるはずである.それにもかかわらず進行胃癌であっても,その診断に早期胃癌と同じ診断体系(拡大画像強調観察,周囲生検による進展範囲診断など)が適用されているのを散見する.
これまで本誌では進行胃癌の診断について,3巻8号(1968年)「進行癌の問題点」,11巻10号(1976年)「胃スキルスの病理」,15巻11・12号(1980年)「逆追跡された胃のlinitis plastica—早期発見のために」,21巻8号(1986年)「胃癌肉眼分類の問題点—進行癌を中心として」,25巻12号(1990年)「早期胃癌類似進行癌の診断」,27巻5号(1992年)「linitis plastica型胃癌診断の現状」,32巻6号(1997年)「早期胃癌から進行癌への進展」,45巻4号(2010年)「スキルス胃癌と鑑別を要する疾患」,55巻6号(2020年)「スキルス胃癌—病態と診断・治療の最前線」といった主題が組まれてきたが,進行癌全体を包括的にまとめたものはなかった.早期胃癌の診断体系が大きく変化した現在において,進行胃癌の診断体系を過去との比較において改めて見直したい.
また最近では,外科手術の方法や術式(腹腔鏡切除や噴門側切除など)も変化していたり,化学療法の適応に分子マーカーが用いられるため複数の生検採取が必須となっていたりと,診断において以前とは異なるアプローチも必要となってきている.
以上のことから,本号では現在(2024年)における進行胃癌の治療方針に則って,進行胃癌の診断体系を今一度整理し直し,更新・再構築することで現在の胃癌診療の改善に役立てることを目的とした.消化管癌の正確な臨床・病理診断には形態の詳細な観察と分析が最重要であるため,①胃癌の肉眼分類の歴史と実際の適用,②最近の進行胃癌に対する病理診断の役割,③体系的なX線・内視鏡・進行度診断体系,④進行胃癌に対する現在の外科的・薬物療法による治療方針について概説をいただいた.
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