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はじめに
Crohn病(Crohn's disease ; CD)患者は増加の一途を辿り,長期経過例が増加している.一方で,生物学的製剤の長期使用も一般的となり新たな局面を迎えている.CDの難治は,短期的な視点と長期的な視点から大別される.短期的には,炎症の制御や寛解導入に抵抗する場合において,例えば“ステロイド抵抗性”と言われる.炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease ; IBD)の難治の定義は,これまで内科的標準治療(栄養療法や免疫統御療法など)に対する抵抗例と理解されてきたが,CDでは標準的治療として生物学的製剤が新たに用いられるため,難治の定義が難しい.現時点では,ステロイドや栄養療法のみならず,IFX(infliximab)抵抗性(resistance)あるいは非反応例(non-responder)との呼称もしばしば用いられる.また,CDでは治療抵抗の尺度を容易に決定できないが,最初の治療により寛解導入ないし有効でなければ次の段階の治療に移るため,その時点で重症度が高まると認識すべきである.
近年,長期的視点からIFXの長期効果持続も問題視され,評価が厳密に行われる.評価の過程では,二次無効(loss of response)も適切に扱われており,各治療段階の病態にも迫る必要がある.例えば,筆者ら1)の施設ではIFXの長期効果は5年で78%に有効と見積もっている.その際,二次無効も考慮して,効果はCDAI(Crohn's disease activity index)では評価できない.評価に際し,Schnitzlerら2)に準じて効果がほぼ維持される状態であるSCB(sustained clinical benefit)というCDAIよりも緩やかな臨床で使いやすい概念を導入した.詳細は原著や本号の執筆者に検討していただきたい.
抵抗例の定義は,単に短期的に疾患活動性が高い重症,劇症活動例のみではなく,腸管合併症や全身合併症が克服できないとの考えもある.IFXなどの生物学的製剤が有効でない理由は,多くは腸管合併症であろう.例えば,狭窄,瘻孔や炎症性腫瘤などが挙げられる.これらの治療抵抗因子としての多様な合併症の病態の解明も本号の主目的の一つである.特に,腸管合併症として,可逆的な合併症である瘻孔,狭窄に加えて,非可逆的な合併症であるアミロイドーシス,短腸症候群や悪性疾患を取り上げたい.さらに,全身合併症として胆道疾患や膵炎などを論じてCDの難治について理解したい.そして最後に,社会活動度の低下への理解も必要であるため,治療選択やケアの在り方についても検討したい.
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