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編集後記
小林 絢三
pp.490
発行日 1987年4月25日
Published Date 1987/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403112821
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西沢(主題)も述べているごとく,小さな大腸癌を見付けることは2つの点で重要である.1つは,X線あるいは内視鏡検査にて小さいものをどこまで,その存在のみならず質的に診断できるかという診断能の限界を求めること.もう1つは,その肉眼形態,組織所見より大腸癌の発生,発育ならびに進展形式を推定することにある.前者については,X線的には側面像の分析,内視鏡的には平盤状隆起,結節状で中心陥凹を伴うものが重要であるとされた(佐々木,牛尾,西沢).後者については,中村は序説において,大腸癌の組織発生についてのcontroversyと,一般に,現在考えられている有茎性腺腫内癌から潰瘍形成性進行癌への発育過程を想定するには,その中間型を臨床的に見付けることが必須であること,更に,より客観的な組織診断基準の設定の重要性を強調した.それを受けて,本号の主題が展開されたわけである.
その結果,小さな大腸癌においても,改めてadenoma-carcinoma sequenceが成立し,これがflat elevationなる臨床病態にも拡大されうること,これに対して,独自の組織学的基準によれば,大腸癌の大部分は腺腫を経ないde novo癌であるとの結果から,臨床的にも10mm前後の扁平あるいは無茎性の癌の発見がより重要であるとの提言が出され,両者の意見が対立した.この意見の差が,材料の差なのか,組織学的基準の差なのか,重ねて取り上げられることが望まれるが,前者の診断能の向上が後者の問題点を改めて浮き彫りにした功績は極めて大きい.
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