--------------------
編集後記
岡崎 幸紀
pp.1462
発行日 1992年12月25日
Published Date 1992/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403110204
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
本誌が消化性潰瘍の特集を組むのは1986年の10月号以来である.この間,H2ブロッカーの普及,プロトンポンプインヒビターの登場と話題に事欠かず,潰瘍に関する論文はすさまじいほどである.なのに,なぜ,沈黙を守ったのか.本誌の主眼とする形態学の観点からすれば,主観に陥らず客観的判断に堪えるデータの蓄積と思考が不可欠なのである.その意味では,今回の難治性胃潰瘍の特集は満を持していた感がある.渡辺らの病理組織学的見解や,岡田らのX線所見の統計学的処理は,新たな消化性潰瘍の研究方向を示唆した.内視鏡やEUSの論文も興味深いが,今ひとつ迫力を感じないのは,一面からのみの捉え方という基本的な弱さがあるのだろうか.他検査との対比,対決の姿勢が必要なのかもしれない.企画に際して,難治性潰瘍を激論の末,8週未治癒としたが,いずれの論文にも有意義な結果が得られており,安心した.形態学にも統計学が不可欠の時代となったが,インプットする検査所見の読みが正しく確立されたものでなければ,結論に大きな誤りの生まれる可能性のあることを改めて述べておきたい.
Copyright © 1992, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.