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編集後記
西沢 譲
pp.1400
発行日 1982年12月25日
Published Date 1982/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403108668
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残胃の癌には,診断から残胃癌の発生に至るまで未解決の問題が多く,そのうえ報告例も少なかったことから系統的な集計がなされにくかった.しかし,本特集をみれば,各施設でも少なからず正確なデータのある残胃の癌がみられ,全国的にはかなりの数があるものと推定される.
残胃の癌の中でも,最も論議の的になるのが切除群と非切除群との癌の新発生の頻度の差,特に吻合部,縫合部における癌発生の問題であろう.本特集の主題でも,欧米の数多くの報告の中にも統計的処理の仕方に問題があると指摘されている.確かに,比較対象例の性,年齢階級別を同一にし,C領域の発生頻度だけでなく,非切除群における吻合部,縫合部位に相当する癌発生頻度まで推察し,そのうえ切除後の癌の新発生を少なくとも10年経過したものとすれば,もとのデータが余程目的をもって整理されていなければならないだけでなく,比較対象数も相当少なくなってくる.筆者の経験でも,同一集団の健康人を40歳を起点として,10年以上観察できたものを5,000人得るのに20年間もかかっている.40歳以前に良性疾患で胃切除を行ったものが2~3%で,前者からは63人もの胃癌が発見されていても,良性切除群からの癌発生は今のところ皆無である.しかし,これだけ長期間観察したつもりでも,分析するのに数が少なく結論が出ない.今後の全国集計に期待したい.また,動物実験からの吻合部発癌の可能性大という研究も,今後ヒトにおける吻合部発癌の発火点の1つになりそうで興味津々である.
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