Japanese
English
今月の主題 小さな未分化型胃癌―分化型と比較して
序説
未分化型微小胃癌診断の歩み
Introduction
高木 国夫
1
Kunio Takagi
1
1癌研究会付属病院外科
pp.1333-1334
発行日 1989年12月25日
Published Date 1989/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403106631
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胃癌の診断に対して,診断技術の進歩と共に,より小さい胃癌の発見への努力がなされてきた.早期胃癌診断の歴史を振り返ってみれば,直径2cmの小さい癌から1cm前後の小胃癌,更に5mm以下の微小胃癌の診断の歴史でもあった.直径5mm以下の微小胃癌が臨床の場で問題になってきたのは,1970年代で,「胃と腸」で1970年に“診断された微小胃癌”の特集が初めて企画された.微小胃癌の肉眼的形態と共に,X線ならびに内視鏡所見の検討が数少ない症例に基づいて行われた.
1970年以前においても,既に胃潰瘍癌の検討で,癌の大きさと胃潰瘍の合併の比率から,癌の大きさが2cm以下では潰瘍の合併は少なく,癌が大きくなると潰瘍の合併が多くなり,組織像のうえから,胃潰瘍を伴った癌に印環細胞癌が多いことが明らかにされていた.しかし1cm以下の小胃癌では,組織学的に腺管を形成する分化型腺癌が大多数を占め,印環細胞癌を含む未分化型腺癌が少ないことが問題であった.このように胃癌の組織発生のうえからも,微小胃癌の検討が必須なものとなってきていたわけであった.このような背景も含めて,1970年の初めての微小胃癌の特集では,癌の大きさはlcm以下が検討されて,やはり組織像のうえから分化型腺癌の検討が主であって,未分化型腺癌は,肉眼形態や組織像の点からわずかに検討がなされ,臨床の場では,検討は認められなかった.供覧された微小胃癌症例は5例とも分化型腺癌であった.
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