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編集後記
滝澤 登一郎
pp.1368
発行日 2002年9月25日
Published Date 2002/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403104560
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粘膜下に浸潤した食道癌にリンパ節転移が生じる確率は約40%である.胃癌と比較すると倍の高頻度で,食道癌の予後不良を説明する主要な因子の1つとなっている。しかし,逆に60%の症例にはリンパ節転移は認められず,これらの症例に対しては食道を温存する治療が望ましい.今回の企画は,食道を切除せずに粘膜下に浸潤した癌を完治させるための第1歩を目指したものであるが,背景には放射線・化学療法の着実な進歩があった.本号でも放射線・化学療法の外科治療に劣らぬ有効性については,国立がんセンター中央病院内科から十分量の症例に基づいた報告がなされている.また,癌の悪性度とリンパ節転移については,病理の立場から藤田らによって報告され,深達度,浸潤部の面積,浸潤先進部における癌の組織像,脈管侵襲,細胞異型などが重要な因子であると再確認された.
目的を達成するための方針が次第に明らかになってきた.食道を切除せずに粘膜下に浸潤した癌を治すためには,最初に癌の性質を病理学的に解析する必要がある.そのためには正確な深達度診断に基づいて病変を内視鏡的に切除し,癌を病理学的に評価する必要があろう.次いで,その結果により放射線・化学療法を併用し,総合的に癌を排除する方法である.EMR,病理診断,放射線・化学療法の各治療が適切に連動すれば夢は叶うと思われる.
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