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編集後記
滝澤 登一郎
pp.1478
発行日 2003年9月25日
Published Date 2003/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403104239
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胃の腺腫という概念は,1975年の「胃と腸」10巻11号において,渡辺英伸らにより最初に提唱された.当時,同一の病変は“異型上皮巣"(atypical epithelial lesion ; ATP)や“IIa-subtype"など一種の綽名で便宜的に診断されていたが,病変の性質を規定せずに,自由度を持たせて観察してみようという配慮があったものと思われる.これに対して腺腫という病理診断は,病変を良性腫瘍と確定することを意味しており,画期的な診断名の提唱であった.その後,EMRの普及に伴い,胃の腺腫という概念も定着し,現在では腸型腺腫と胃型腺腫に亜分類され,病理診断として一般に使用されている.胃の腺腫の大半は腸型の腺腫であるが,当初から低異型度の高分化腺癌との鑑別が問題になっていた.腫瘍細胞の核の形状と配列,絨毛状の増殖構造の有無,病変の大きさなどが鑑別点として指摘されていたが,今回の特集においても同様の見解が示された.腺腫と病理診断された病変に対して,切除を施行するか否かの問題は,少なくとも腸型の腺腫と診断された場合に限り,臨床医の判断に任せて良いと考える.しかし,最近注目されている胃型の腺腫の場合は,症例数が少なく,診断基準も確定されていない.また,胃型の高分化型癌が胃型の腺腫と誤診される可能性もあり,臨床医は十分に留意して治療にあたる必要がある.胃の腺腫と診断されても,腸型腺腫と胃型腺腫は全く異質の病態である.診断に携わる病理医は,この点を十分に考慮して,腸型・胃型の別を診断に明記すべきであろう.
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