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編集後記
石黒 信吾
pp.1550
発行日 1998年10月25日
Published Date 1998/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403103854
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1992年の同様の特集号で,病理医の問で癌の診断に大きな違いがあるとして世間を騒がせた.6年が経過した現在,この違いが解消されたか否かが今回の特集の目的であり,診断病理医も前回とほぼ同様のメンバーとした.結果は,本編に見るごとく,今回も各診断医の違いは依然として存在すると言わざるを得なかった.しかしながら,座談会の中でも強調されているように,呈示された症例の内容あるいは分析の仕方によっては診断の差異はそれほどでもないと思える.今回も特に強調しておきたいのは,高度異型腺腫か境界病変か癌かの診断で意見の分かれた病変はほとんどが粘膜内病変で,癌としても低異型度の病変であり,特に生検診断で治療法を決定するうえではその診断名上の差異は問題にならない病変であるという点である.ただ,各施設の臨床医はその施設の病理医の診断に基づいて診断し,統計的な作業を行っているために病理診断名の差異が問題であることは否定できない.今後,より客観的な指標に基づいた,診断病理医共通の癌の組織診断基準の作成が急務であろう.
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