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編集後記
石黒 信吾
pp.242
発行日 1997年2月25日
Published Date 1997/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403105017
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今回は,“十二指腸乳頭部癌―縮小手術をめざして”と題して特集を組んだ.十二指腸乳頭部癌を歴史的にみると,序説にもあるように前回の1988年の特集号に比べて種々の面で進歩している.診断面では,EUS,IDUS,CT,MRCPなどの新しい手法が導入され,外科的な手術にしてもQOLを考慮した幽門輪温存膵頭十二指腸切除術が普及し,縮小手術として乳頭局所切除や内視鏡的切除が検討されるようになったことがわかる.またOddi筋内にとどまる癌の予後が良いという成績も揃ってきた.しかしながら実際の画像診断面をみると,新しい手法の導入にもかかわらず,術前に早期の癌の浸潤範囲が確実に診断されているとは言えないのが現状である.今回の主題である縮小手術,特に乳頭局所切除あるいは内視鏡的切除をめざすためには,今後種々の手法を用いた正確な術前診断をめざすとともに,食道癌と同様にどのようにして症状の出ない早期の症例を拾い上げるかという問題が残されている.病理としても遺伝子を含むいろいろな手法による生検診断精度の向上や,肉眼型を含む,より詳細な症例の分析とともに,細胞診などを加味した,より簡便で正確な診断手法の開発が必要と思われる.管と実質臓器の両面を持つ乳頭部癌の診断はいまだ発展途上にある分野と言える.本特集は,消化管の画像診断を主とする本誌の特集としてはまれな特集号である.このような主題を取り上げたことは,画像診断手法の進歩により,消化管の診断でも内視鏡やX線のみならずEUSなどの手法が取り入れられている現在,本誌も,より積極的に新手法を取り入れた特集を組むようになっていく現れであるとも思える.
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