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食道胃接合部癌は日本でも噴門部癌を中心としてわずかながら増加傾向にある.欧米ではBarrett食道の増加に伴い,この部の食道胃接合部の癌が極めて高い頻度で報告され,診断ならびに治療に関して議論がなされている.欧米におけるこの部の癌の増加はHelicobacter Pylori(HP)感染率が低く,逆流性食道炎に伴うBarrett上皮の頻度が高いことによると考えられる.最近わが国でも消化性潰瘍に対してHP除菌療法が行われるようになり,更に若年者ではHP感染率が低いと言われている.それに伴い今後逆流性食道炎,更にはBarrett上皮の増加,噴門部癌を始めとする食道胃接合部癌の増加も予測される.本来噴門部癌,接合部癌,食道下部腺癌は分けて論ずべきものではあるが,欧米ではこの近傍の癌はほとんどが進行した状態で発見されるため,病理学的にこれらの区別は困難であると考えられる.
このようなことからSiewert1)は腫瘍の肉眼的位置が本来のesophagogastric junction(EGJ)から上下5cm以内に存在する癌を広義の接合部癌とし,更にEGJから食道側1cm,胃側に2cmの範囲にある癌をType 2 tumor(true carcinoma of the cardia),それ以上離れた胃癌をType 3(subcardiac cancer),食道側1cm以上離れた癌をType 1(adenocarcinoma of distal esophagus)として分類し,その臨床病理学的ならびに手術方法の検討を行っている.この中でType 2はEGJから発生した真の噴門部癌と定義し,時に食道胃接合部癌とされているとしている.しかしこれは進行癌の解析で,正確な発生部位ならびに癌の進展に伴う形態的変化の解析は困難である.また日本では本来のEGJから2cm以内の胃癌を噴門部癌として扱ってきた.病理学的にはこの部の癌は分化型腺癌が多く,また周囲の腸上皮化生が少ないなどの特徴があるとされている.しかし接合部癌を論ずるにあたって,正常に存在する噴門腺の範囲ならびにEGJ部位の定義が明らかでなく,EGJの同定は必ずしも容易ではない.狭義の食道胃接合部癌を理解するためには上記の問題を解決しなければならない.特に病理学的にはshort Barrett上皮由来の癌と噴門腺から発生した腺癌の区別を厳密に行うことが重要である.また狭義の食道胃接合部癌(Siewert,Type 2)の特徴を解析するためには,早期癌の検討が重要である.
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