アメリカ・ブラウン大学医学部在学日記・6
産科実習は人形を使ったお産の練習から
赤津 晴子
1
1スタンフォード大学病院内科
pp.385-387
発行日 1995年2月10日
Published Date 1995/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402903529
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陣痛の間隔がだんだん縮まってきた.脊髄麻酔を受けた妊婦は子宮の強い収縮を圧迫感として感じてはいるものの,さほどの痛みはないようだ.もっとも,彼女にとっては初めてのお産であり,緊張と不安で私の差し出した手をギュッと握りしめている.私のほうは私のほうで緊張と不安が高まる.なにせ私にとっても初めてのお産なのである!もう少し正確に言えば,私が担当医として初めて取り上げることになるお産なのである.しかも産科の実習を始めて2日目である.しかし,そんなことは口に出せない.もう何十回も赤ちゃんを取り上げています!という顔をしながら,その母親に「頑張って!大丈夫よ!」と励ましの声をかける.産道をチェックする.もう少し時間がかかりそうだ.分娩室をいったん出てナースステーションに行き,「産婦人科」というここ数日の私の愛読書を手に取る.もう一度「お産の仕方」という章を広げながら頭の中で復習した.さあ,そろそろのはずである.分娩室に戻る.指導に当たってくれる助産婦さんに合図され,ガウン,キャップ,ゴーグル,そして手袋を身につけた.まるで手術室に入るようないでたちである.赤ちゃんの頭がだいぶ下がってきている.
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