心療内科コンサルテーション・6
心身症に対する漢方療法
岡 孝和
1
1九州大学医学部・心療内科
pp.2144-2148
発行日 1992年11月10日
Published Date 1992/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402901885
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漢方におけるストレスの理解
一般に,生体にストレッサーが加わると,それに対処するために生体には様々な変化が生じる.漢方では個体のホメオスターシスを乱す因子(ストレッサー)を,内因(怒,喜,思,憂,恐,悲,驚の七情;情動ストレスに相当),外因(風,寒,暑,湿,燥,火の六淫:環境ストレスに相当),不内外因(食事の不摂生など;ライフスタイルの乱れに相当)という概念で,ホメオスターシス維持機構を,気血水および陰陽などのバランスとして,ストレス反応を気滞,気逆,気虚,瘀血,血虚,水滞という気血水分類(弁証)および陰(寒)陽(熱)分類(弁証)などでとらえている.
現代医学においても,生体に同一のストレッサーが加わっても,過去の経験,学習に照らして,ストレッサーを制御可能か否かで,ストレス反応は異なることが知られている.実験動物では,制御可能と判断されれば,能動的ストレス反応パターンとして活動性,攻撃性の亢進,心拍出量の増加,血圧の上昇,骨格筋血流量の増加が生じ,一方,制御不可能と判断すれば,受動的ストレス反応パターンとして,行動抑制,意欲の低下,徐脈,末梢血管抵抗の増加が生じることが観察されている.
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