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本邦初,チーフレジデント視座からの指導医向けテキスト
本書の役割は,巻末の対談で野木真将先生が仰っている「みんなの(リーダー育成のための解決法に対しての)共通認識を広げ,育てるツールとして役立ってほしい(p.331)」という言葉に集約されていると感じます.日米の伝統的なチーフレジデント制度をもつ研修病院でチーフレジデントを経られたメンバーらが,指導医として,ミドルレベルのマネジャーとして,教育者としてどのようなことに気を付けながら診療・教育・マネジメントを実践していけばよいかを指南してくださっています.しかし,押しつけのような形ではなく,ソフトな語り口調で,“研修教育をしたことがない”“自信がない”という読者の皆さまにも,入りやすい構成になっているのではないかと思います.
本書で評者が個人的にお勧めしたい章はたくさんあります.以下列挙すると,カンファレンスを盛り上げるためのコツは?(p.70),病棟などで少人数相手の指導で役立つポイントは?(p.96),EBMをどうやって教えれば良いか?(p.102),せっかく作ったカリキュラムがうまく共有されてないときの良い対処方法(p.179),当直表をどのように作成,調整したら良いですか?(p.228),医学生を上手に勧誘するコツは?(p.251),採用過程でのアドバイスはありますか?(p.254)……このように,他書にない“痒い所に手が届く”“それ,興味ある!”指導医向けの内容が満載です.Think-pair-shareやEPA(Entrustable Professional Activity),Bloom's taxonomyなど,経験値のある指導医たちが多く踏襲していると思われる重要な概念の共有まで行き届いていて,とても勉強になると思います.その他,忙しい臨床現場で効率的に教えるコツ(p.26),多くの指導医が直面するであろう世代間ギャップをどのように考えるかの章(p.34),うつ(p.277),やBurnout(p.283)への対処,医学教育を学ぶプログラムの紹介(p.296)なども,多くの指導医たちのサポートになるのではないでしょうか.書評タイトルに記載したように,役職として責任あるレジデントを束ねるミドルマネジャーらが集結して記述された指導医指南書は,評者の調べる限りこれまで日本にはなかったのではないかと思います.新世代の後輩たちを指導する立場のすべての指導医たちにお薦めの,珠玉の一冊です.
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