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暫定診断が想起されるまで
寒さも厳しくなってきた12月末,片頭痛の既往のある25歳女性が頭痛を主訴に救急外来を受診した.寒い部屋に入った瞬間に突然右側頭部をバットで殴られたような激しい頭痛が出現したとのことだった.今までの片頭痛は非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の頓服で対応可能だったが,本日の頭痛は痛みの程度や発症様式が異なっていた.悪心・嘔吐や麻痺,痙攣,意識消失,しびれ,構音障害,嚥下障害,めまい,頸部痛,閃輝暗点などは病歴上認めなかった.身体診察でも項部硬直や麻痺,筋力低下,しびれ,失調,脳神経症状など特記すべき所見を認めなかった.突発発症の激しい頭痛から救急外来の医師はクモ膜下出血(subarachnoid hemorrhage:SAH)を疑い,頭部CTを施行した.出血を疑う高吸収域や動脈瘤を疑う病変は認めなかった.まだSAHは否定できないと考えた救急医師により髄液検査が施行されたが,白血球上昇や糖の減少,キサントクロミーは認めなかった.右側頭部に拍動性の頭痛が残存していたが,ジクロフェナクナトリウム坐薬で改善したため,片頭痛の診断で帰宅となった.頭痛は改善したが,第2病日にトイレで腹部に力を入れた際に突発的な激しい頭痛が再度出現した.その後ジクロフェナクナトリウム坐薬を8時間ごとに使用したが,薬の切れるタイミングで頭痛は増悪した.年末に差し掛かるタイミングでもあり,しばらく自宅で様子を見たがその後も頭痛は一時的に改善するも増悪を繰り返した.第4病日に再度救急外来を受診した.頭部CTと頭部MRIが撮影されたが,異常を認めなかった.しかし痛みが強く入院加療となった.片頭痛との診断で入院後,スマトリプタンが使用されたが頭痛は改善しなかった.
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