- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
わが国は超高齢社会であり,OECD諸国のなかで最も高齢化が進展している.これは,医学・医療はもとより,介護や福祉,そして社会に多くの課題を呈している.高齢者の増加はさまざまな疾患の有病者,認知機能低下や要介護状態,臨死期の人が増加することを意味し,在宅医療,救急医療をはじめとする医療サービスのニーズ拡大を意味する.次に,一極集中や核家族化,独居者の増加などの社会背景も相まって,介護力低下や“老老介護”・“認認介護”が問題となっている.さらに,生涯未婚率の増加や少子高齢化,ひいては社会保障費の増加,生産年齢の減少など多くの問題が複雑に絡み合っている.
さて,この“高齢者”とは,そもそも誰なのであろう? 日本老年学会・日本老年医学会の「高齢者に関する定義検討ワーキンググループ」は,現行の基準による高齢者(65歳以上)の身体機能や認知機能が10〜20年前に比べて,客観的に5〜10歳は若返っていることを報告している1).実際,臨床現場には,現行の高齢者の基準(65歳以上)をはるかに上回る年齢であっても若壮年者と同様のアプローチをすることが妥当であるように考えられる患者がいる.一方,65歳を超えたばかりなのにさまざまな衰えがあり,いわゆる高齢者の特徴を踏まえた診療をする必要がある患者も経験し,個人差が大きいことを痛感する.その判断には,高齢者総合機能評価(comprehensive geriatric assessment:CGA)を当然行う必要があるが,生活の状況や社会的な役割,活動度を含め,いくら緻密なCGAを行なっても,その人が「“高齢者”であるか否か」は明確にはならないのである.ただし,例えば85歳の集団は,90歳の集団と比較して何らかの機能が低下している可能性は確率として上がると考えられ,社会保障制度などの兼ね合いで高齢者の基準(65歳以上など)を決める必要はあるのであろう.
Copyright © 2023, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.