連載 ローテクでもここまでできる! おなかのフィジカル診断塾・5
—おなかが痛い その5—心窩部痛—おなかの音を聴きに行け!
中野 弘康
1
1大船中央病院内科
pp.1405-1408
発行日 2022年8月10日
Published Date 2022/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402228392
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腹部の身体診察は,言わずもがな,視診→聴診→打診→触診の順番ですね.これはOSCEや医師国家試験でも定番の質問かもしれません.では,あえてお尋ねしますが,この4つの診察法のうち,もっとも有用性の低いのは? と聞かれたら,皆さんどう答えますか.「そんなの,どれも有用だよ」というあなたは正しい.しかし,あえて選択せよと言われたらどうでしょう.「きっと“聴診”なんじゃないの?」と答えるのではないでしょうか.
たしかに急性腹症における“聴診”は,実臨床ではあまり重視されていないように思います.アラームが鳴りやまない救急室や,多忙な内科外来では腹部聴診に神経を集中することは難しいかもしれません.とはいえ,医学生や若手医師に“腹部の聴診ってどうやっている?”と聞くと,たいてい同じ答えが返ってきます.“腸蠕動音を聴取して,腸蠕動音の亢進/減弱を確認します”と.聴診所見に関しては,個人的にもそれほど重視していません(が!),すごくおなかを痛がっているわりに,腹部の触診所見に乏しい患者さんで,血管雑音(Bruit;ブルイ)を聴取することができたら,それはものすごく意味があります.ただし,漫然と聴いていては容易に聴き逃してしまいます(それはフィジカル全般に言えると思いますが).ここでも良質な病歴があってのフィジカルなのです.さて,症例をみてみましょう.
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