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著者はここ10数年来,RCPC(Reversed Clinico-pathological Conference)を積極的に紹介,発信し,世に知らしめた立役者である.RCPCとは「検査データを示し,そこから病態を読み解く」という臨床検査医学の教育手法の一つで,個々の検査を深く実践的に学習できるという特徴がある.データの表示法や,conferenceの進め方は多様であるが,重要な原則がある.「1.疾患名を当てることが目的ではない」.ゲーム感覚として診断するのは副次的楽しみとしてあっていいが,時々,推測した病名が外れると不機嫌になったり,こうも考えられる,など執拗に食い下がったりする参加者がいる.そもそも検査値だけから病名診断はできない.病態を読み解くことが主たる目的である.著者の信念もそのように一貫している.「2.基本データのみ提示する」.検査というものは,2次的・特殊なものになればなるほど疾患に直結し,結果の解釈は容易となる.基本的・一般的なものほど考えをめぐらすことが多く,この基本検査(ルーチン検査)に強くなることが臨床的にはどの職種,どの場面でも求められる.著者はかなり以前より「基本検査成績は最早,問診や基本的診察と同等に利用すべき」と主張しており,この基本検査へのこだわりが真骨頂である.
さて,conferenceの進め方には大きく2通りある.オーソドックスな方法は,基本検査データを提示し(ワンポイントでも時系列でもよい),個々の検査につき,正常でも異常でも型どおりに解釈し,総合して病態を推測し,必要な2次検査を挙げ,その結果を提示し,最終病態診断に至るというものである.評者はこの方式を実践している.もう一つは著者が実践している「信州大学方式」で,基本検査データの時系列を示し,「栄養状態」「細菌感染」など代表的病態それぞれにつき,対応する検査データを基に評価するもので,病態指向型であり,ダイナミックに病態の変化を検討するという,ある種,臨床的・実際的なものである.本書には,それら代表的な病態が網羅されており,病態に関連した検査値の理解を深めるのに大変役立つものと思われる.
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