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確かにすごい! ACE阻害薬
日本においては,ACE阻害薬が過小評価されていないだろうか? レニン-アンジオテンシン(RA)系は強力な昇圧系なので,これを抑えるRA系阻害薬が降圧薬として使用されることは理にかなっている.このためにACE阻害薬のほかにも直接的レニン阻害薬,アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB),ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬が降圧薬として使用されている.わが国の『高血圧治療ガイドライン2014(JSH2014)』では,RA系阻害薬のうちACE阻害薬とARBが,Ca拮抗薬,利尿薬とともに積極的適応のない高血圧患者に対する第一選択薬となっている.また,ACE阻害薬/ARBの積極的適応として,左室肥大,心不全,心筋梗塞後,慢性腎臓病(CKD),脳血管障害慢性期,糖尿病,メタボリック症候群,誤嚥性肺炎(ACE阻害薬のみ)と幅広い疾患が対象とされている.一方,JSH2014における「各種降圧薬の特徴と主な副作用」の項目は,①Ca拮抗薬,②ARBであり,ACE阻害薬は3番目に記載されている.日本においてはCa拮抗薬とARBが汎用されていることを反映していると思われる.これは,日本人を含む東アジア人においては,ACE阻害薬の副作用である空咳を比較的多く認めることが影響していると思われる.ARBが咳のないACE阻害薬として浸透している面もあるが,ACE阻害薬をARBと同じものとして扱って良いのであろうか?
ACE阻害薬のエビデンスは多く,その有用性は確立している.最近では,ACE阻害薬がARBよりも有用である可能性も報告されている.26の大規模研究における146,838症例を対象としたメタ解析においては,ACE阻害薬とARBは血圧降下作用,脳卒中,心不全において有意差はなかったが,ACE阻害薬は血圧降下と独立して冠動脈疾患を減らす効果を認め,ARBにはこれがなかったことが報告されている.また,糖尿病患者を対象とした研究のメタ解析では,ACE阻害薬は心血管イベントを減少させたが,ARBには有意な改善効果がみられなかったと報告されている.
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