書評
―伊藤 浩 編―β遮断薬を臨床で活かす!―エキスパートからのキーメッセージ50
前村 浩二
1
1長崎大学病院循環器内科
pp.849
発行日 2014年5月10日
Published Date 2014/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402107567
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β遮断薬の真価がわかる一冊
β遮断薬は古くて新しい薬である.私が医者を始めた頃,降圧薬は利尿薬とβ遮断薬が主流であった.β遮断薬はISA(内因性交感神経刺激作用)の有無,MSA(膜安定化作用)の有無,β1選択性,効果の持続時間などで細かく分類されていた.そして,患者にとって適切なβ遮断薬を使いこなすことが,医者の腕の見せどころという風潮にあった.その後長時間作用型のカルシウム拮抗薬,ACE阻害薬,ARBが次々に開発され,またβ遮断薬との比較で,ACE阻害薬またはARBの優位性を示す大規模臨床試験の報告が相次いだ.そして2014年の日本の高血圧治療ガイドラインJSH2014では,特に合併症のない患者への降圧薬の第一選択薬からは外れるようである.
しかしこれをもって,β遮断薬に対する評価が下がったわけではなく,虚血性心疾患や心不全合併,頻脈傾向の高血圧患者には依然,主要降圧薬として推奨されている.また心不全や虚血性心疾患,頻脈性不整脈などの心疾患では,症状の改善のみでなく,その予後を著明に改善する確固たるエビデンスがあり,β遮断薬の評価はますます高まっている.
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