今月の主題 脳卒中up-to-date
ベッドサイド診断の問題点
脳卒中でみられる意識障害
加茂 久樹
1
,
秋口 一郎
1
1京都大学医学部・神経内科
pp.2512-2513
発行日 1987年11月10日
Published Date 1987/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402221388
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脳卒中は,その経過中に種々のレベルの意識覚醒度の障害あるいは意識内容の障害を来す.意識障害の原因あるいは責任病巣については未確定であるが,①上行性網様体賦活系(ARAS)ないし視床下部調節系の障害という生理学的な仮説,②脳内モノアミンないしアセチルコリンニューロン系を中心とした神経線維群によるnetworkや神経核群に責任病巣を求める解剖学的仮説などがあり,急激な意識障害の発症では何らかの神経断裂現象の関与も推測されている.したがって,意識障害はARASが,小部位で障害されても起こりうるし,意識内容に関与する大脳皮質が両側広範に障害されたときにも生じる.天幕下病変では脳幹網様体が直接破壊されることにより,小病変でも意識障害は生じる.天幕上の一側性病変では,それ自体で意識障害を来すことは稀で,二次的に生じる頭蓋内圧亢進や脳ヘルニアによる間脳・中脳の圧迫により意識障害が生じる.
脳卒中では,各病型により,意識障害の頻度,重症度に差があり,これが個々の症例の予後とも関連している.一般的に脳出血は脳梗塞より意識障害の発生頻度が高い.亀山によると脳出血で58%,脳梗塞28%1),くも膜下出血36%2)に意識障害が認められ,脳出血では,意識障害の高度の例が多い.一般的に意識障害は機能予後とも密接に関連し,意識障害の軽いものほど独歩退院の比率が高い3).
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