私の本棚
臨床検査を正しく生かすために
柴田 一郎
1
1嶺町医院
pp.294
発行日 1978年2月10日
Published Date 1978/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402207763
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25年来ほとんど毎月小宅にくるKという医学書店の主人は,私のその時々の読みたい本,ほしい本が鋭敏にわかるらしい.この人が発刊時に持ってきた本で,土屋俊夫監修,河合忠,河野均也共著,演習臨床病理学(中外医学社,1973)があった.B5版,220頁のあまり厚くもなく活字もぎっしりつまったものではなく,パラパラとめくってみて面白そうなので,演習という言葉に抵抗を感じたが,いつかは読むだろうと買っておいたしかるに半年ほど前,書類の整理の際出てきた昭和50年の年頭号の医学会新聞で慈恵医大の阿部正和教授がこの本をすすめておられた.早速その夜読み始めると,面白くてやめられず,次の日も外来を終え食事をすます暇もなく読み続け,結局毎晩午前2時頃まで没頭して数日で読了してしまった.
臨床病理学という学問は新しい臨床医学の一分野であるにもかかわらず,予算の関係からほとんどの国立大学に中検はあっても講座がなく,講座があるのはごく一部の私大に限られている.その創始者は当時の県立山口医大の柴田進教授であったというが,国立になったとき解散したという.私も言葉から受ける印象では病理解剖学的なもの,あるいは私達が教わった病理解剖示説のようなものを想像していたが,この本を読んでみると臨床的に得られる検査データをもとに,これをいかに解釈し,診断と経過の判定にいかに役立たせるかという実践的な学問である.
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