- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
浮腫の成因の1つに血清蛋白濃度の低下があり,その疾患としてはネフローゼ症候群や肝硬変が臨床的に最も多く,また栄養失調症などでもこの関係がみられることはよく知られている.この際の浮腫の原因の主要な役割は血中アルブミン低下であることも周知のところである.いずれにせよ,浮腫が低蛋白血症によって生じている場合は,その原因が一般診察や簡単な検査で容易に推定しうる場合が大部分である.一方,このような低蛋白血症を生ずる原因が全くわからず,本態性低蛋白血症と呼ばれていた特殊疾患がまれながら存在することも昔から知られていたが,今日では(1960年以後)少なくもその大部分は蛋白喪失性胃腸症に属するものであることが明らかにされている.また既知の胃腸疾患で特に著明な低蛋白血症を伴うことがあり,漠然と吸収不全と考えられていたものの中にも蛋白喪失性胃腸症という特殊機転が関与していることもわかっているし,収縮性心膜炎にしばしば合併する低蛋白血症も,うっ血肝における蛋白代謝異常よりも,この特殊機転が大きな役割を果たしていることが明らかになっている.
血中蛋白の正常分解代謝過程に胃腸系が関与し,胃腸系に血中蛋白が漏出することは1957年頃から,初めは免疫学的手法により,次いで放射性書同位原素使用により,しだいに明らかになり,別記の今日蛋白喪失性胃腸症を合併しうる諸疾患の中には,この過程が過剰に働いて低蛋白血症の原因となっているものがあることも1960年前後より次々と確立された.その臨床的検査法としてGordonの131I-PVP試験(1959)が導入され,この臨床概念確立の上に大きな役割を果たし,また比較的簡単に本症の診断を可能にしていることも既によく知られている.
Copyright © 1972, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.