内科専門医のための診断学・11
甲状腺機能低下症の臨床診断
尾形 悦郎
1
1東大第1内科
pp.1729-1735
発行日 1970年11月10日
Published Date 1970/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402203416
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内分泌疾患の診断を正しいルートにのせるために
内分泌疾患は,一般の内科医から敬遠される傾向にあるように思える.それというのも,成書の疾患記載の大部分が病態生理学的事項で占められ,また,その診断も,血中・尿中のホルモンあるいはその代謝物の濃度測定,内分泌腺からのホルモン分泌量の測定,さらに各種中間代謝物の定性・定量によることが多いためであろう.これらの検査は疾患の確定診断の方法としては,確かに信頼性の最も高いものである.しかし,内分泌疾患でも,注意して患者の診察にあたれば,その大部分のものは外来オフィスのレベルでも,かなり正確に推定診断がつけられるものである.どの疾患でもそうであろうが,特に内分泌疾患の場合,実際の患者について診断がつけられていく過程のうちで,大勢の種々雑多な疾患の患者の中から,ある特定の内分泌疾患の推定診断を下す過程が,最も大切で,しかも一番むずかしい.ある疾患さえ疑われれば,施設と人手とを駆使して診断を確定する作業は,むしろ容易なことである.さらに,内分泌機能異常は,現在では,その大部分が,完治はできないまでも,ほぼコントロールすることが可能となった.したがって,第一線の内科医がこれら疾患の患者を正しい診断ルートにのせることの意義は,きわめて大きいといえる.今回ここでとりあげる甲状腺機能低下症も,その例外ではない.
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