書評
―長野展久 著―医療事故の舞台裏―25のケースから学ぶ日常診療の心得
長尾 能雅
1
1名古屋大学病院/医療の質・安全管理部
pp.883
発行日 2013年5月10日
Published Date 2013/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402106816
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
医療事故の悲しみと苦しみが生んだ,渾身の指導書
医療事故とはどういうものか,100人の医師に問えば100の答えが返ってくる.何が過誤で,何が合併症か,事故調査はどうあるべきか,司法は,賠償は,と議論は尽きない.しかし,多くの医師は医療事故を断片的,一方向的にしか知る立場になく,その全体像を多角的に説明できる者は少ない.
本書にはきわめてリアリティに富む25の医療事故のエピソードと,その顛末が記されている.いずれのエピソードも,医療者,患者,司法,そして社会の思考回路を誇張なく伝えるものであり,日々医療事故と向き合っている医療安全管理者からすれば,これこそが医療事故の実態とうなずける.著者は誰に肩入れすることなく,可能な限りの中立性と自制を保ちながら,粛々と事故事実と再発防止策をつづっている.
Copyright © 2013, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.