column
研修医のあなたに注目します
佐伯 晴子
1
1東京SP研究会
pp.215
発行日 2003年11月30日
Published Date 2003/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402102453
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焦っているとき,イライラするとき,不安なとき,困ったとき,ご自分がどんな表情をするか,あなたは知っていますか? 鏡に向かって百面相をしても正面しかわかりません.
横顔やうつむいたときなど,自分で見ることのできない表情に,私たちは意外にも無頓着で無防備です.しかし,実際には,他人の表情からその人の心の中を読み取ることはよくしていますね.言葉ではいいですよと言っていたがやっぱり反対なんだ,と確信するのは,表情を見れば気持ちがわかるからです.
問題は,伝えたい相手に表情を向けていればメッセージとして有効に「私は反対する」と意思を伝えることができるわけですが,無関係の相手にその表情を向けてしまい,誤解を生むことがあるのです.今夜中に症例レポートを作成するよう突然指示され,まいったな,今夜の約束を変更してもらわないといけない,また怒られる,嫌だな全く,などと思いながら廊下を歩いていたら,あなたの受け持ちの患者さんとすれ違いました.あなたはレポートのことで頭がいっぱいで,すれ違ったことに気づいていません.患者さんはあなたが毎日にこやかに病室を訪ねてくれるので,いい研修医さんに受け持ってもらったとつねづね感じていました.廊下を歩いてくるあなたに気づき,ていねいに挨拶したのですが,あなたは全く無視して,しかもイライラと不機嫌な顔で通り過ぎてしまいました.患者さんはあなたの豹変ぶりにショックを受け,いろいろ気を回し,病気が悪くなっているのではないか,あるいはあなたとの信頼関係に自信がもてなくなるかもしれません.
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