今月の主題 腹部疾患をエコーで診る
臓器・疾患別アプローチ―ワンポイントレクチャー
〈腎(非腫瘤性)〉
水腎症
佐久間 亨
1
1東京慈恵会医科大学放射線医学
pp.250
発行日 2004年2月10日
Published Date 2004/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402100959
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中心部エコー像(central echo complex:CEC)内には8個程度の小腎杯,2~3個の大腎杯および腎盂が含まれる.何らかの理由で尿路に閉塞・狭窄が起こり,これらに尿が貯留すると水腎症となり,超音波検査上はCEC内に限局性あるいは分葉状の無エコー域として描出される.水腎症の程度,持続期間により,無エコー域の大きさ,形状,あるいは腎実質の萎縮の程度は変化し,最終的には腎実質が菲薄化,無機能となり,分葉状の囊胞性病変のみとなる.一方,先天性の腎盂尿管移行部狭窄の場合には,著明な水腎症をきたしており,囊胞性の腹部腫瘤として描出される.比較的均一の大きさの10個前後の囊胞が,より大きな囊胞を取り囲んで存在するような特徴的な像を呈することから,多囊胞性腎異形成症と鑑別される.
診断上の注意点としては以下が挙げられる.①腎杯に限局する拡張の場合には,傍腎盂囊胞と鑑別が困難な場合があるとともに,腎盂腫瘍を疑いCEC内を十分に観察する必要がある.②腎盂は腎内腎盂と腎外腎盂に区分されるが,この腎外腎盂がやや大きく拡張している場合に水腎症と誤りやすい.この場合には腎杯の拡張がないことにより鑑別される.③膀胱内に大量の尿貯留がある場合には,軽度の腎盂,腎杯,尿管の拡張をきたすことがある.④時に拡張した腎静脈が水腎症と紛らわしいことがあるが,腎門部方向に追跡していくと,尿管は尾側へ,腎静脈は頭側へと連続していくことより鑑別が可能である.⑤重複腎盂尿管の場合には,一方のみが水腎症を呈する場合が多い(図1).
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