特集 青少年暴力・2
栄養と遺伝子と非行
香川 靖雄
1,2
1女子栄養大学
2女子栄養大学医化学教室
pp.860-862
発行日 2001年12月15日
Published Date 2001/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401902626
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非行の原因には遺伝要因と環境・心理要因がある.特に栄養と遺伝子は多くの病態の原因であるが,ここでは非行を栄養と遺伝子の新しい視点から解説する.栄養素は遺伝子産物である諸酵素,諸受容体などを介して脳の活動を維持するので,遺伝子病に伴う精神障害の多くが食事療法の対象である.重篤な精神疾患が栄養素欠乏症(例えばペラグラの精神錯乱)で起こり,また単一遺伝子病についてもLesch-Nayhan症候群の自傷行為などが確立されている.しかしこれらの症例数は少なく,非行に栄養素摂取と遺伝子多型がどれだけ寄与しているかは長期間の十分な無作為化対照試験で検証しなければならない1).同じ教育・社会環境でも暴力事件は特定の青少年に限られる原因は客観的根拠から解明すべきである.栄養と遺伝子の異常は筆者の専門とする生化学分析で客観的に評価できるが,非行の誘因となる攻撃性尺度はBuss & Perryの質問紙などで部分的に客観化できる.極端な早期非行に遺伝的要因が大きいことは一卵性双生児調査によって示されている2).また注意欠陥/多動障害(ADHD)3)をはじめ,性格関連の遺伝子も報告されている.警察庁の「少年非行の概要」によると非行頻度は1951,1964,1983年のピークがあり,現在は第4のピークを形成しつつある4).
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