特集 「感染症新法」下における予防活動
「感染症新法」の運用上の留意点—現行法下での対応も含めて
品川 靖子
1
,
橋本 雅美
1東京都衛生局医療福祉部結核感染症課
pp.841-844
発行日 1998年12月15日
Published Date 1998/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401901994
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1974年に製作された野村芳太郎監督の映画「砂の器」に,ハンセン病患者である,主人公の父親が地方の村で保護され,村の隔離病舎に収容されるシーンがある.時代設定は戦前であろう.隔離病舎そのものは画面に出てこないが,その病舎は人里からだいぶ離れたところにあるようで,村人がリヤカーで患者を山奥のほうに運んでいく.もちろんハンセン病患者を隔離する必要がないのはいうまでもないが,当時の隔離病舎が想起できて興味深い.
1997年に機能停止したが,東京都では都立荏原病院のキャンパスに「高度安全病棟」を設置していた.ラッサ熱をはじめとするウイルス性出血熱の患者が発生したときに備えて1979年につくられた病棟である.病院とは別棟で,設置当時には空気感染し極めて感染力が強いと考えられていたウイルス性出血熱の病原体を封じこめるために,ベッドアイソレータをはじめ,二重ドアの間には医療従事者のためのシャワー設備や陰圧設備が設けられた.平素は使われることはなく,患者発生時に各都立病院より精鋭の医師,看護婦,検査技師による診療班が編成されることになっていた.実際に使われたのは,1987年に「ラッサ熱再燃の疑い」患者が入院した一度だけである.この患者も結果的には,心のう炎の治療のため高度安全病棟から他の専門病院へ移り,手術を受けて救命された.
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