特集 廃棄物処理—公衆衛生の課題
廃棄物処理と公衆衛生
山中 和
1
Yawara YAMANAKA
1
1(財)日本産業廃棄物処理振興センター
pp.831-834
発行日 1991年12月15日
Published Date 1991/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401900474
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◆はじめに
1945年に戦争が終わり,厚生省を中心に公衆衛生行政の分野が急速に拡大した.大学の医科系分野では,新たに公衆衛生学講座が順次開講されていった.公衆衛生は主として疾病予防と健康を増進する医学として登場し,さらに健康と環境の関連を究めて保健衛生に適した生活環境の向上を目的とする科学として,環境衛生分野が拡大されていった.
1950年頃,環境衛生の施策として最初に取り.上げられたのが,地域社会の住民活動として「蚊とはえのいない生活」を奨励,支援することで,疾病の予防と衛生的な生活を目標に全国的に展開された.やがてこの運動は衛生害虫の駆除から地域の生活改善事業へと発展し,水洗化の普及と共にし尿やごみの衛生的処理が水道事業と並んで重要な事業となった.
1954年「清掃法」が施行され,市街地を中心に特別清掃区域が設けられ,その地域の汚物(し尿とごみ)の処理が行われてきた.当時はし尿処理に重点が置かれ,し尿処理施設と浄化槽の整備が現在まで,計画的に進められてきた.し尿はごみと異なり1人当たりの発生量も内容もほとんど変わらず,処理技術の進歩に併せて計画的に事業を進めてゆくことは容易であった.
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