アニュアル・レポート
公衆衛生の動向
三好 保
1
Tamotsu MIYOSHI
1
1徳島大学医学部公衆衛生学
pp.177-179
発行日 1991年3月15日
Published Date 1991/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401900298
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21世紀への世紀の入口に入る最後の10年となった時期の公衆衛生は,時代の流れと共に大きな変換点に立っていると感じられる.その最大の課題は,平均余命の延長がもたらした世界的な規模で増大の続く人口の老齢化現象であろう.この人口の老齢化が,先進国の中でも,最も早い速度で進行し続けている日本では,最も深刻な問題が山積しだしているのではないかと考えられている.ただ幸いなことに,日本の経済的な発展が局時に進行してきたので,より深刻な事態への発展は少なくて済んでいる状況が続いている.一方では国民所得の向上が,国民の平均余命を延長させる原動力ともなって今日の長寿社会をもたらしたとみることができる.国民所得の向上は,生活の質的向上意欲を刺激し,国民の関心を食生活の充実やグルメ嗜好へと誘導している.食生活の充実と平均余命の延長は,国民の健康意識の高まりを招き,快適で健康な人生指向にかり立てるようになってきた.このような風潮は,人生設計の中により快適性を求めた自己主張の傾向を加速し,旧世代の儒教的人生観からきた画一的な人生論から,新しい世代の快適な人生を求める画一的な新人生論指向が芽生え始めている.
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