論考
難病患者の地域ケアと保健所の役割
黒田 研二
1
Kenji KURODA
1
1大阪大学医学部公衆衛生学教室
pp.481-485
発行日 1986年7月15日
Published Date 1986/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401207299
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●はじめに
わが国の難病対策では,対策の対象を「特定疾患」として指定する方式が採用されている.この方法は,原因や治療法の解明という目的には有効であろうが,頻度の少ない疾患,研究の進展が期待される疾患等が優先的に選ばれがちである.しかし特定疾患以外にも難治性でかつ介護負担,経済的負担,精神的負担の大きな疾患という,社会的な意味での難病患者は地域社会には多く存在しており,そのような状態の患者をも対象に含めた地域ケアの体制を組織化していくことも,難病対策の重要な課題である.そのためには,障害者や要援護老人に対する医療,福祉サービスとも一定の共通の基盤をもった難病患者に対する地域ケア体制が構築されなければならない.そのような地域ケアは,保健,医療,福祉等の各領域が連携しなければ成立しないが,地域ケアの組織化を推進する主体としては,これらの各領域のサービスに責任を負っている地方自治体の役割が,まず第一に重要となろう.本稿では,私どもが大阪府で実施した難病患者の要望とサービスに関する調査結果を紹介するとともに,府下のいくつかの保健所での経験をもとに難病の地域ケアにおける保健所の役割を検討したい.
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