特集 温泉と健康づくり
ストレス・休養と温泉療法
山内 祐一
1
,
川上 人志
2
,
田中 恵子
2
Yuichi YAMAUCHI
1
,
KAWAKAMI・Hitoshi
2
,
TANAKA・Keiko
2
1東北大学教養部保健体育学科
2東北労災病院心療内科
pp.662-667
発行日 1989年10月15日
Published Date 1989/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401208030
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
■はじめに
社会経済情勢の急変がストレス社会をつくりあげている.どこの職場にも先端技術が導入され,加速度的に合理化が進み,新しいタイプの職場ストレスやストレス病が多発するようになった.このため,勤労者の健康維持増進には,単に身体面だけのチェックでは十分とはいえない.心の健康も含めた総合的な労働衛生管理の考え方が必要となった.いわゆる職場のメンタルヘルスケア対策が重要視されてきたのは当然のなりゆきと思われる.これを推進するには,企業の国際化,女性の職場進出および高齢化社会なども配慮せねばならない1).こうみてくると,職場ストレスを構成する要因は,必ずしも職場だけに限らないことがわかる.しょせん人間は職場だけの存在ではない.むしろ,1日の半分以上を家庭や地域社会で過ごしているものである.したがって,集団の中における生活行動と個のライフスタイル双方が健康管理の対象になる.しかもこれら職場,家庭,社会,個人の4要因は互いに有機的なつながりを持つ.いずれに歪みが生じても,他因子に何らかのインパクトを与えずにはすまない.こうして各種のストレス関連疾患が発症してくる(図1)2).かかるストレス病対策や健康づくりへの積極的な取り組みがようやく普及してきたのも時代の要請といえよう.ただし,健康科学はあくまでも実践の科学である.
Copyright © 1989, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.