発言あり 老人の独居と同居
老親と共に生きていく中年の課題,他
岩田 敏郎
1,2
1社会福祉法人聖徳会特別養護老人ホーム
2大阪新生苑
pp.73-75
発行日 1989年2月15日
Published Date 1989/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401207860
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百歳を超えた私の知り合いのおばあさんが,つい最近老人ホームに入った.80歳近い自分の娘に世話になるのが心苦しいという.そのおばあさんに,今年90歳になる私の祖父が手紙を書いた.「その年になって,そのようなところに入れられるなんて,なんてかわいそうなことよ」と.おばあさんは老人ホームでその手紙を披露し,「世の中にはかわいそうなじいさんがおる.雪が2メートル積もる山の中のでっかい家で,洗濯も掃除も御飯炊きも一人でやって,たった一人で暮らしている.それに比べて私は暖かい部屋でいつも食べさせてもらって,みんなと楽しく,娘の手を借りずに生活できる.ありがたいことだ.」とホームの皆に言った.「一体どちらが幸福なのか言ってほしい.」とある人から,先日たずねられた.今もその結論は出ずじまいである.
「家族との同居」即好ましい老人像,「一人暮らし」即孤老とはいいがたい面も多分にある.
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