衛生公衆衛生学史こぼれ話
48.文明国の伝染病
北 博正
1,2
1東京都環境科学研究所
2東京医科歯科大学
pp.166
発行日 1988年3月15日
Published Date 1988/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401207638
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第二次世界大戦前,ドイツの疫学者の間で伝染病を文明国の伝染病と未開国の伝染病に分類するという考え方が有力であった.彼らによれば,呼吸器系統の伝染病は主として飛沫感染により,人と人が接近し,その間隔が小さくなり,吸入する菌量が増加し,菌の毒力が強いため,濃厚感染が起こり易い.室内(学校,事務所,劇場,乗物等々)で多数の人間が密集することの多い文明国にみられるので,このように命名された.
これに対して消化器系伝染病は主として経口感染で,飲食物の汚染,便所,上下水道の不備,ハエの発生等,感染経路がいろいろあり,未開国に共通してみられるので,このような分類となった.現在のアジア・アフリカの諸国に典型的なものがみられる.
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